セクターの概念
SPXは毎年見直される厳選上場企業500社の集合体です。
SPX系ファンド自体が十分な銘柄分散投資になっており(※)、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしているので、アメリカ経済あるいは資本主義社会が崩壊でもしない限りファンドの価値がゼロになることはありません。
SPXに注目していると相場全体として考えることが多いですが、中には様々なタイプのビジネス(企業)が含まれています。
※債券、REIT、仮想通貨など種類の違う金融商品は含まれていません。
セクター
これらの企業は共通点、類似点をベースにグループ分けがされており、「セクター」と呼ばれています。
セクターは11種類定義されていて、すべての企業はここに含まれます。
セクターは不景気のときに人気が出る、好景気のときに人気が出るなど特性があるので、どのようなセクターが活発に取引されているかを理解すると、市場参加者の景気に対する考えが推測できるようになります。
種類とその割合
セクターの紹介とSPXの構成率はこのようになっています。(数字は2021/3/9時点)
- Information technology(情報技術): 27.60%
- Health care(ヘルスケア): 13.44%
- Consumer discretionary(一般消費財): 12.70%
- Communication services(通信サービス): 10.79%
- Financials(金融): 10.34%
- Industrials(資本財): 8.47%
- Consumer staples(生活必需品): 6.55%
- Utilities(公益事業): 2.73%
- Materials(素材): 2.64%
- Real estate(不動産): 2.41%
- Energy(エネルギー): 2.33%
情報技術セクターが占める割合が圧倒的に大きいですね。
情報技術と言うとGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)とかFANG(Facebook, Apple, Netflix, Google)とか呼ばれる企業のイメージがありますが、実はGoogleやFacebook、Netflixは通信サービスセクター、Amazonは一般消費財セクター、とされており、このセクターに含まれません。
これらはセクターとは別にハイテク・インターネット関連株というくくりで語られることもあります。
状況によって資金が集中し株価が上昇しがちなセクターというのが存在します。
※ただし、セクターの中でも業績が良い企業と悪い企業は存在しうります。それは業界内での競争の結果であったり、個別要素が原因だったりと様々です。
各セクターには特徴があります。
もっともわかりやすいのがUtilities(公共事業)セクターです。
電力、ガス、水道など生活に必要なインフラを供給する企業が属しています。
生活に必須な分野は景気の影響を受けにくい特徴があり、景気が悪い時に資金の退避先として人気が出ます。
情報技術セクター
Apple, Microsoftが含まれておりこれからも高い成長性が期待されています。
Visa, Mastercard, Paypalなども含まれています。
景気と業績は連動しにくいですが、不景気だと他のセクターに資金が流出しやすいと言えます。
また成長の振れ幅の見立てが難しいため、不安定な面があります。
ヘルスケアセクター
医薬品や医療機器に関する研究や製造を行う企業が属しており、成長が期待されています。
Johnson and Johnson, Pfizer(ファイザー)などが含まれています。
医療は人間が生きていく限り必要ですし、今後も末永く技術発展していくのである程度不景気にも強く成長性もあります。
私は安定感と成長性の両面でこのセクターに最も期待を寄せています。
一般消費財セクター
自動車やアパレル、レジャー用品、ホテルレストランなど、消費者向け小売業・製造業・サービス業を展開する企業が属しています。
消費者の動向が直接反映するので景気がよいと好調になります。
Amazon, McDonald's, Nikeなどが含まれています。
通信サービスセクター
もとは通信系インフラが主要ビジネスでしたが、現在はインターネット上で行われるサービスを行う企業も多く含まれています。
Facebook, Netflix, Disney, Googleなどが含まれています。
Googleのサービス群、映像のサブスクなども継続的な収益が発生する、広い意味でのインフラなので割と不況に強いとされています。
新しいビジネスが出てくればまた成長するでしょう。
金融セクター
銀行、保険、証券会社、消費者金融などで、主な収益源が金利なので、景気にかなり敏感です。
金利が収入の源なので、金利上昇局面や好景気な時に強みが出ます。
資本財セクター
航空や鉄道、建設に関わる資材の製造・販売、商業サービスの提供を行うB2B企業が属しています。
物質的なビジネスのベースとなる企業が含まれており、景気が良いときに強みが出ます。
生活必需品セクター
食品や日用品の製造・販売を行う企業が属しています。
生活必需品などを多く含むので景気に左右されにくいセクターです。
P&G, Coca Cola, Walmartなどが含まれます。
公益事業セクター
上で説明しました。
素材セクター
化学材料や金属材料など、さまざまな業種の製品生産に欠かせない材料を製造するB2B企業が属しています。
景気にとても敏感で、好況時には強みを発揮します。
インフレや金利高が進むときに仕込んでおきたいといわれるセクターです。
不動産セクター
土地や物件の売買・貸借を扱う企業が属しています。
主な収益源が手数料なので、消費者が気にするような景気や物価、金利などさまざまな要素の影響を受けやすいです。
エネルギーセクター
石油ビジネスをおこなう企業が属しています。
業績が、原油価格に大きく依存しているため、価格変動に敏感に反応します。
基本的な考え方
これら11セクターを憶える必要はないと思います。
不景気でも変わらず成立するものは不景気の時あるいは不景気になりそうなときに選ばれやすくなります。
逆に不景気の時はあまり調子が出なくても、経済的に余裕があるときの伸びしろが大きいものは好景気の時あるいは好景気になりそうな時に選ばれやすくなります。
SPX系ファンドを「ガチホで気絶」運用をしている場合は、セクターの動向に右往左往する必要は全くありませんが、市況レポートを読む際などにどのセクターが活発に取引されたかの情報から市場参加者がどう考えているのか推測できるようになります。
景気循環
好景気と不景気は交互にやってきて、そして好景気と不景気の移行フェーズを考えると、景気はこのように4つのフェーズがあると考えられます。
好景気 → 後退 → 不景気 → 回復
どのセクターが人気かを観察していれば、市場参加者が景気循環のどのフェーズにいると考えているかが見えてきます。
※現実にそのフェーズかどうかはではなく、市場参加者の(先行しがちな)考え