NY株式市場ウォッチ by ちわひ

アメリカ在住の「ちわひ」による、読めばニューヨーク株式市場の相場感覚が身につくブログです。

なぜ明日の相場予想が当たらないのか?

前日まで相場を眺めていて「明日は上がるだろう」と思っていたのに、蓋を開けてみたら大きく下がっていたということがあると思います。

 

たった一日後のことなのに予想が大きくハズレるのはなぜでしょうか?

実例 

例えば2021/02/24のSPXは+1.14%で、最大の懸念がなくなったように見え、明日からは確り上がるだろうと予想していましたが、翌日2021/02/25のSPXは-2.45%と大きく下げました。 

少し詳しく見ていきます。

ポジティブな材料 

まずは日本における日銀のような存在である、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関である連邦準備理事会「FRB」の議長証言についてです。

2/23(前々日)にFRBのパウエル議長は議会証言でこのように述べました。

米国経済は、FRBが目標とする雇用及びインフレの水準からは程遠く、目標達成まで時間がかかるとした一方で、ワクチン普及により経済改善が速まり、今年後半には強い回復がある可能性に言及。連銀は目標達成まで低金利政策を続けると言明。

これにより市場には安堵感が広がりました。

次の日2/24、

FRBインフレ目標達成には3年以上かかるかもしれない」

と発言し、

「連銀はインフレと雇用の目標達成まで低金利政策を続けると言明」

という部分と合わせて、考えが再確認されさらにリスクオン(積極姿勢)の流れが加速しました。

経済活性化への期待が高まります。

 

ワクチンの情報。

パウエル議長の言葉を裏付けるように2/24にはワクチン配布が加速するとの見通しが立ちました。

ジョンソン&ジョンソン(JNJ)のワクチン3月末までに2000万回分を供給できる見込み。

ファイザー(PFE)とモデルナ(MRNA)が3月末までに両社合わせて2.2億回分を供給できる見込み。

経済正常化への期待が高まります。

 

バイデン政権の追加経済対策も可決・施行に向けて概ね順調に進んでいます。

経済正常化への期待が高まります。

 

そして、各種経済指標。

2/24, 2/25に発表された経済指標はほとんどが市場予想を上回りポジティブなものでした。

経済正常化への期待が高まります。

 

これだけの材料が揃っていながらなぜ2/25は大きく下げたのでしょうか?

チキンレースに似た心理状態 

まず、ベースにあるのが、市場が暴落、バブル崩壊を警戒しているという点です。

現在はバリュエーションが高すぎると言われています。

バリュエーションとは本来の企業価値と現在の株価の比較で、バリュエーションが高いということは、本来の企業価値より現在の株価が大きく上回っているという意味です。

要するに「企業が過大評価されていて、株が高騰している」という状態です。

過去のバブル時代の水準にまで来ているので、たとえ今の経済が発展しているようにみえても、まるでチキンレースのようにみんながいつでもブレーキを踏めるように、恐る恐る投資をしています。

ですからネガティブな情報がでれば敏感に反応して株価が大きく下げてしまいます。

 

では、2/25はなにがきっかけで大きく下げたのでしょうか?

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下げたきっかけ その1

一つは10年債利回りの上昇です。

これは、10年債に投資することの旨味が増えることを意味します。

お金はより魅力的な投資先に流れます。

株に投資している現金を引き上げて10年債に投資する割合が増えることで株価が下がります。

このとき10年債の利回りは2%未満ですが、なにより元本割れのリスクが無いと言うのが魅力です。

国債は国が債権を発行してお金を集めるという行為ですから、国債の人気が出て国債が多く買われると

市中のお金が減る → 経済の周りが鈍化する → 企業活動が減速 → 株価下落

となります。

 

なぜ利回りがアップしているかというと、このチキンレース状態に保険をかけたい人が多くいるからです。

言い換えれば「そろそろ暴落来るぞ・・・備えておくか・・・」と準備している人が多いとも言えそうです。

下げたきっかけ その2 

そして2つ目のきっかけ。

2/25は朝から

アトランタ連銀ボスティック総裁

カンザスシティ連銀ジョージ総裁

セントルイス連銀ブラード総裁

などのスピーチがあっていずれも

長期債利回り上昇を問題視せず、これによる金融政策の変更はないとの主旨が示された

そうですが、 そのブラード総裁が、

「すべての理論は今年のインフレ率上昇を指し示している」

と述べました。 

先日パウエル議長が3年以上低金利(経済が回るので株価にはよいこと)が続くかも 、と言っていたのに、ブラード総裁がそんなことを言うもんだから、市場はびびって株価は下落し続け、戻しきれませんでした。

事前に予測するのは不可能

こうやって事後にリサーチすると原因は見つかるのですが、果たしてこれを事前に予測できる個人投資家はいるでしょうか?

 

2/25に各連邦準備銀行の総裁のスピーチがあり、その中で水を指すような発言をする可能性があり、それが株価にこれだけの影響を及ぼすということを予測できますか?

私はできません。

 

ブラード総裁がどういう性格(悲観的・楽観的、ハト派タカ派など)も知りませんし、セントルイス連銀内部でどのような分析が行われているかなんてわかりません。

(わからないからこそスピーチで発表するのですが)

 

また、ちわひにはスピーチに注目するほどの熱意もありません。時差もありますし。

正直スピーチが予定されていたことも知りませんでしたし、スピーチを聞く手段さえ知りません。

 

今回株価はブラード総裁の発言に反応したわけですが、それは他の方のスピーチの可能性もありますし、他の原因の可能性もあります。

 

これらすべてを考慮に入れて前日に予測できる人は大したもんです。

短期トレードより長期投資「ガチホで気絶」

デイトレードを含む短期売買は激しい情報戦の嵐で、普通の人には難易度が高いということがわかると思います。

(ただ、それでもこのような大まかな予想をし、機械的に購入し、予想がハズレても自動的に損切りできるような人はきっと成功できるのでしょう)

 

ただ、視点を長期に切り替えると、こういったブレは無視できるほどのノイズになり、大局的な視点で相場を読むことができるようになります。

 

悪いことは言いません。

短期売買で大きく勝ち続けようなんて思わないほうがいいです。

 

やっぱり「ガチホで気絶」ぐらいでちょうどよいのです。